パナソニック汐留美術館 「ル・コルビュジエ 諸芸術の綜合 1930-1965」

建築家ル・コルビュジエ(1887‒1965) は活動の後期において、建築の指揮のもとで絵画や彫刻をつなぐ試みを「諸芸術の綜合」と言い表しました。そしてそれ以上に、「諸芸術の綜合」とは統 一、調和、普遍的法則の理想主義に導かれた彼の芸術観全体を示すスローガンでもありました。 ル・コルビュジエは近代建築の巨匠として世界的に知られていますが、視覚芸術の他分野においても革新をもたらしました。本展は1930年代以降に彼が手がけた絵画、彫刻、素描、タペストリーをご覧いただき、さらに彼が求め続けた新しい技術の芸術的利用にもスポットをあてます。そして後期の建築作品も併せて紹介することで、はるかに伝統的な枠組みを超えたル・コルビュジエの円熟期の芸術観を明らかにします。 楽観的で歓喜に満ちたこれらの作品は、「住宅は住む機械」という彼のよく知られた言葉に集約される機能主義者のイメージを超えた、あらたな像を結びます。また、レジェ、アルプ、カンディンスキーといった同時代を生きた先駆的な芸術家たちの作品を対峙させることで、当時の芸術潮流における彼の立ち位置も浮かび上がらせます。 本展はゲスト・キュレイターにドイツ人美術史家ロバート・ヴォイチュツケ氏を迎え、20世紀の革新的頭脳の創造の源泉に迫ります。

化粧文化ギャラリー 「はじまりの美学 3期初化粧」

化粧文化ギャラリーのオープン初年は、「はじまり」をキーワードに3つのテーマから化粧文化を紹介しています。1期「化粧文化研究のはじまり」、2期「化粧のはじまり」に続き、3期では「初化粧」をテーマに取り上げます。 伝統的な社会の中では、成人、結婚、出産など、ライフステージが大きく変化するとき「初めて行う化粧」がありました。〈Art〉では、さまざまな通過儀礼の中でも特に、既婚女性を象徴する化粧である「剃り眉と丸髷」に焦点を当てています。「眉は顔の額縁」といわれるように、顔の印象を大きく左右する重要なパーツ。眉を剃り落とすことには、不安やためらいもあったことでしょう。また娘時代の髪型を結えなくなることに、結婚への期待の一方で寂しさを感じた女性もいたのではないでしょうか。通過儀礼としての化粧に注目しながら、化粧のもつ社会的な意味や、人生に訪れる「初化粧」への揺れる思いを読みときます。 〈Books〉では「転換点」から連想を広げて6つのテーマで書籍をご紹介します。 思い返すと、そこが「転換点」だった。人生にはドラマチックな変化を迫られるときがあります。社会から求められる姿に脱皮することへの不安、抵抗、憧れ、ステップアップに伴う高揚感...。ターニングポイントのときに思いをはせてみませんか。

サントリー美術館 「没後120年 エミール・ガレ:憧憬のパリ」

エミール・ガレ(1846–1904)はフランス北東部ロレーヌ地方の古都ナンシーで、父が営む高級ガラス・陶磁器の製造卸販売業を引き継ぎ、ガラス、陶器、家具において独自の世界観を展開し、輝かしい成功を収めました。 ナンシーの名士として知られる一方、ガレ・ブランドの名を世に知らしめ、彼を国際的な成功へと導いたのは、芸術性に溢れ、豊かな顧客が集う首都パリでした。父の代からその製造は故郷ナンシーを中心に行われましたが、ガレ社の製品はパリのショールームに展示され、受託代理人等を通して富裕層に販売されたのです。1878年、1889年、1900年には国際的な大舞台となるパリ万国博覧会で新作を発表し、特に1889年の万博以降は社交界とも繋がりを深めました。しかし、その成功によってもたらされた社会的ジレンマや重圧は想像を絶するものだったと言い、1900年の万博のわずか4年後、ガレは白血病によってこの世を去ります。 ガレの没後120年を記念する本展覧会では、ガレの地位を築いたパリとの関係に焦点を当て、彼の創造性の展開を顧みます。フランスのパリ装飾美術館から万博出品作をはじめとした伝来の明らかな優品が多数出品されるほか、近年サントリー美術館に収蔵されたパリでガレの代理店を営んだデグペルス家伝来資料を初公開します。ガレとパリとの関係性を雄弁に物語る、ガラス、陶器、家具、そしてガレ自筆文書などの資料類、計110件を通じて、青年期から最晩年に至るまでのガレの豊かな芸術世界をお楽しみください。 ※作品保護のため、会期中展示替を行います

東京シティビュー 『手塚治虫「火の鳥」展 -火の鳥は、エントロピー増大と抗う動的平衡(どうてきへいこう)=宇宙生命(コスモゾーン)の象徴-』

数々の名作を生みだした手塚治虫が、みずからのライフワークと宣言したマンガ『火の鳥』は、その血を飲んだものは永遠の命を得るという伝説の鳥“火の鳥”を追い求める人々の葛藤を描く一大傑作長編です。過去と未来を交互に描きながら、「生と死」「輪廻転生」といった哲学的なテーマを縦横無尽に表現した本作の壮大な世界観は、今もなお人々の心をとらえてやみません。 本展では、生物学者・福岡伸一氏が企画に携わり、30年以上の長きにわたって執筆された壮大な叙事詩を読み解きます。さらに、本展のキービジュアルは、グラフィックデザイナー・佐藤卓氏が担当。時空を超えて存在する超生命体“火の鳥”を中心に、赤と黒を基調としたインパクトのあるデザインです。 『火の鳥』の連載開始から70年が経過した今、福岡氏を道先案内人として、新たな生命論の視点から『火の鳥』の物語構造を読み解き、手塚治虫が生涯をかけて表現し続けた「生命とはなにか」という問いの答えを探求します。 ※手塚治虫の「塚」は旧字体が正式表記です。