2024年から新千円札の顔に!「北里柴三郎記念館」で近代日本医学のルーツを知る
※すべての画像:複写・転用・転載・複製を禁ずる
2024年度の上半期(4~9月)を目途に、一万円札、五千円札、千円札の3種類が20年ぶりに刷新されます。新一万円札の肖像は日本近代社会の創造者と言われる実業家の渋沢栄一、新五千円札の肖像は女性の地位向上と女子教育に尽力した教育家の津田梅子、そして、新千円札の肖像は近代日本医学の父として知られる微生物学者の北里柴三郎です。
新千円札の顔となる北里柴三郎とは、いったいどんな人物だったのでしょうか。港区白金にある北里柴三郎記念館には、北里柴三郎にまつわる資料や研究業績が展示されています。新紙幣の発行を前に記念館を訪ね、近代日本医学の黎明期を支えた北里博士の足跡をたどってきました。
新千円札の顔となる北里柴三郎とは、いったいどんな人物だったのでしょうか。港区白金にある北里柴三郎記念館には、北里柴三郎にまつわる資料や研究業績が展示されています。新紙幣の発行を前に記念館を訪ね、近代日本医学の黎明期を支えた北里博士の足跡をたどってきました。
北里柴三郎の生涯と研究業績を資料と共に紹介
学校法人北里研究所の白金キャンパスにある北里柴三郎記念室は、白金高輪駅から歩いて約10分ほど。渋谷駅や広尾駅、恵比寿駅、田町駅からはバスも出ており、北里研究所前が最寄りのバス停となっています。展示室は2017年に完成した2階建ての北里柴三郎記念館の1階にありました。記念館の外壁には、北里博士が創設した北里研究所本館が、特殊な加工で描かれています。このコンクリート工法を見学するために、建築関係者が訪れることもあるのだそうです。
展示室への入室は無料で、誰でも見て回ることができます。入口には、北里博士による血清療法の確立を記念して撮影された写真と、北里研究所を開設した際の決意の漢詩が展示されていました。
最初のエリアでは、子ども時代から晩年まで年表や当時の写真などで北里博士の人生を振り返ることができます。九州の熊本県阿蘇郡小国町で生まれ育った柴三郎少年は、明治維新を迎えて軍人や政治家になることを夢見ていましたが、両親の強い勧めで熊本医学校に進学します。ここでオランダ人軍医のマンスフェルトと出会い、指導を受ける中で医学の面白さに開眼していきます。
北里博士が愛用していた顕微鏡も展示されています。この顕微鏡と恩師であるマンスフェルトとの出会いで、本格的に医学の道に進んだ北里博士は、東京大学医学部の前身である東京医学校に進学します。ちなみに、顕微鏡はドイツの光学機器メーカーであるCarl Zeiss社のもの。Carl Zeiss社は同じドイツのLeitz社と共に、顕微鏡の開発に力を入れていました。Carl Zeiss社は現在スマートフォンのレンズ開発などでも知られています。
25歳の北里博士が書いた『医道論』は、医の基本は予防にあると説いた演説原稿です。これまで一般には公開されていませんでしたが、現在開催中の特別展「北里柴三郎博士特別展-未来への挑戦、原点は北里柴三郎-」では、貴重な『医道論』の全文を公開中。特別展は10月31日まで開催されています。
内務省衛生局に入局した北里博士は、コレラや赤痢などの伝染病について調査研究を行います。ここから北里博士はさまざまな研究成果を上げていきました。
研究に使われた培養装置や福沢諭吉の書簡も
北里博士は当時の医学の最先端だったドイツへ留学し、病原微生物学研究の第一人者だったローベルト・コッホの研究室で、これまで誰もがなし得なかった破傷風菌の純粋培養に成功しました。破傷風菌は空気が嫌いな「嫌気性菌」で、その性質に気づいた北里博士は、純粋培養を行なうために独自の嫌気性菌培養装置を開発しました。
北里博士の研究成果の紹介と共に、培養装置のレプリカが展示されています。
北里博士の研究成果の紹介と共に、培養装置のレプリカが展示されています。
破傷風菌は土の中などに生息する菌で、増殖の過程で代謝産物として強力な神経毒素を作り出すため、人が感染すると破傷風となり、命に関わることもあります。北里博士は破傷風菌の純粋培養に成功した翌年に、毒素の免疫抗体を発見して、血清療法を確立しました。世界的な研究者として一躍注目を集めます。
帰国後、北里博士は、福沢諭吉らの支援によって私立伝染病研究所と、日本初の結核専門病院となる土筆ヶ岡養生園を創設しました。展示されているのは、福沢諭吉が養生園の事務長に宛てた書簡があります。この書簡には、福沢諭吉の自宅に養生園から届けられた牛乳の瓶に人毛がついていたことを衛生的な観点から咎めており、北里博士はこの叱責を肝に銘じたそうです。
他にもペスト菌の発見など数々の研究成果を上げた北里博士は、1901年の第1回ノーベル賞の最終候補に選ばれます。受賞には至らなかったものの、生涯に亘る研究・衛生事業への取り組みは高く評価され、その後、日本はもとより、ドイツやフランス、ノルウェーなど、各国から勲章が授与されました。
展示室には、2015年に抗寄生虫薬・イベルメクチンの開発でノーベル生理学・医学賞を受賞された、北里大学特別栄誉教授の大村智博士のコーナーもあります。展示されているノーベル賞のメダル(レプリカ)は、ノーベル財団による公式の複製品です。
現在にも通じる感染症の予防ポスター
国民の衛生意識の向上を重要視した北里博士は、啓蒙活動にも尽力。その一つが、感染症の予防ポスターです。汚染された川には、チフス菌、赤痢菌、コレラ菌が。病原菌を視覚化したポスターはインパクト大! ぜひ、じっくりと見てください。
ペスト菌が人間の肺に入ると肺ペストとなり、飛沫で人から人に感染してしまいます。ポスターでは防護服を着た人々や、ソーシャルディスタンスの重要性などが描かれており、近年の新型コロナウイルス感染症を連想させます。
「結核退治絵解」は、手洗いや消毒など今でも通じる感染症予防の大切さを絵で紹介されています。子どもや海外の人でも一目で理解できそうです。これらのポスターは公民館や病院など、人の多く集まる施設に掲示されていました。
他にも展示室には、北里博士の交友関係を紹介したパネルや肖像写真なども展示されている。実は、新しくなる千円札の肖像は、角度によって向きが変わる3Dホログラム技術が採用されている。新紙幣を作るにあたって、北里研究所から北里博士の肖像写真を複数枚提供している。
さらに展示室にはグッズコーナーも。関連書籍はもちろん、絵はがきや付箋に、マスコットキャラクターの“柴ちゃん”があしらわれたクリアファイルなども。キュートな“柴ちゃん”は北里大学の学生が考案したものだそう。
学生から海外の観光客まで、さまざまな人が訪れるという北里柴三郎記念館。貴重な資料やわかりやすい展示によって、北里博士を中心とした近代日本医学の発展を知ることができました。もし、展示の中で気になることがあれば、展示室スタッフに質問することもできるそうです。開館日や休館日などの詳しい情報は公式ホームページをご覧ください。新紙幣に切り替わるまで、あと少し。今こそ新千円札の肖像となる北里柴三郎の業績を知る良い機会かもしれません。
《特別展「北里柴三郎博士特別展-未来への挑戦、原点は北里柴三郎-」10月31日(火)まで》
《特別展「北里柴三郎博士特別展-未来への挑戦、原点は北里柴三郎-」10月31日(火)まで》
《北里研究所北里柴三郎記念館》
東京都港区白金5-9-1
https://www.kitasato.ac.jp/jp/kinen-shitsu/
開館:月曜日~金曜日 10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館:土曜日、日曜日、祝日、夏季休暇、開校記念日(4月20日)、北里研究所創立記念日(11月5日)
入館料:無料
東京都港区白金5-9-1
https://www.kitasato.ac.jp/jp/kinen-shitsu/
開館:月曜日~金曜日 10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館:土曜日、日曜日、祝日、夏季休暇、開校記念日(4月20日)、北里研究所創立記念日(11月5日)
入館料:無料