竹芝や浜松町を観光しながらサステナブルについて考えよう! 東京・港区にあるSDGsの取り組みが感じられるスポット

地球温暖化、生物多様性、カーボンニュートラルなど、世界規模で持続可能社会への関心が高まる中、近年いたるところでその言葉を見るようになった「SDGs(エスディージーズ)」。今回は観光とSDGsを絡めて、街歩きを楽しみながら持続可能社会への取り組みが感じられるスポットを紹介したいと思います。

「港区立エコプラザ」で港区内のSDGs活動を教えてもらおう

SDGsとは2015年の国連サミットで採択された「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。これは貧困、環境、健康、福祉など世界共通の課題に対して17のゴールと169のターゲットをわかりやすく掲げ、2030年までの達成すべき目標を定めたものです。今ではサステナブル(持続可能)な社会を目指すために、自治体だけでなく企業でもさまざまなSDGs活動が行われています。そうした取り組みを観光を楽しみながら感じてみようというのが今回の目的です。

そこで、まずは港区内で気軽に見られるサステナブルに向けた取り組みを教えてもらおうと、浜松町にある「港区立エコプラザ」を訪ねました。

「六本木や品川のように都市開発の最先端を行くエリアがあり、大きな企業の本社も多い港区では日本の中でも早い段階から環境保全に取り組んできました。それに加えて大使館が多く、世界からの視線も集まる土地柄でもあることから、SDGsが目指す持続可能性にもいち早く関心を持った地域だと思います」

そう話してくれたのは港区立エコプラザで数々の企画を担当されている西城明男さん。

JR・浜松町駅、または都営地下鉄・大門駅から徒歩4分ほどのところにある港区立エコプラザ(以下、エコプラザ)は2008年に設立された環境学習施設です。現在は脱炭素型社会、自然共生型社会、循環型社会、そしてSDGsの4つをテーマに年間100件以上の展示や講演・イベントなどを行っています。この日も、環境保全活動に積極的な港区内の企業による団体「みなと環境にやさしい事業者会議(mecc)」の活動展示会が開催されていました(現在は終了)。

日光ふりそそぐ館内は木の温もりをふんだんに感じる空間です。都心にある港区と山間部で生産される木材というのはなかなか結びつかないかもしれませんが、実はこの建物には港区が多摩地区のあきる野市から借り受けて管理している「みなと区民の森」で伐採された間伐材がたくさん使われています。円形のカウンターや一枚板の机だけでなく、天井にも木材のパネルが貼られていてとってもおしゃれ。

そのほかにもエコな仕組みがいっぱい。壁一面に設けられたウッドラックには「トライウォール」という強化ダンボール素材で作られた椅子が備えられています。さらに自習室では港区内の廃校になった小学校・旧鞆絵小学校などで使われていたものを活用した工作椅子に座って館内に置かれた環境に関わる本を読むことができます。

カウンター近くの水槽には、子どもたちの人気者になっている大きな金魚やとっても小さなヤマトヌマエビが飼育されています。入り口近くには「ビオトープ研究室」という講座で学ぶ子どもたちなどが活動するビオトープがあり、自然に近い環境の中でメダカやヤゴが棲息。さらに「これ屋上の庭園で育てたんですよ」と西城さんが見せてくれたのは、なんとサトウキビ。南国の植物であるサトウキビが東京で育つということに驚きでした。

uni4mを通じて木材で全国各地と繋がる港区

そんなエコプラザで、西城さんが港区ならではのサステナブルな取り組みとして教えてくれたのは「みなとモデル二酸化炭素固定認証制度」です。

2011年に始まったこの制度は、港区が全国81の自治体と協定を結び、区内に建てられる建物への国産木材の使用を促し、その使用量に相当する二酸化炭素固定量を認証するという取り組みです。認定を受けた建物には木材使用量に応じて一つ星から三つ星までの認証が与えられています。

港区が協定を結ぶ自治体の一覧(現在は81自治体)

「木材を通じて港区と全国の自治体のネットワーク(uni4m:ユニフォーム) ができている。食べ物や観光で繋がっている自治体は多いですが、環境保全を通じて各地と繋がるという取り組みというのは新しい視点ですよね」と西城さん。

スターバックス ムスブ田町2階店

オフィスから商業施設まで幅広く含んでいるのがこの制度の特徴。虎ノ門のホテル「The Okura Tokyo」(岡山県真庭市などのヒノキ材を使用)やJR田町駅前にある「スターバックス ムスブ田町2階店」(秋田県湯沢市のナラ材を使用)、六本木にある新感覚の書店「文喫」(岩手県葛巻町のナラ材、山形県金山町のクリ材を使用)、そして今年4月にオープンする複合施設「札の辻スクエア」といった人気の観光スポットも「みなとモデル制度」の認定を受けています。

芝5丁目に今年4月オープンする「札の辻スクエア」の大ホール(イメージ)

木材の生産地ではない港区ですが、こうして全国各地の“木材の町”と関係を結び、国産木材を積極的に活用することで森林整備の促進やCO2削減に貢献しているんですね。もしかしたら港区を観光で訪れる方々に縁のある町の木材もどこかに使われているかも。

エコプラザでは協定自治体の木材を展示している

「港区にはいたるところに街の歴史を感じる部分が多いですよね。寺院や仏閣のような分かりやすい場所だけではなく、例えば、ちょっと裏道に入れば昔からある坂が名前も道幅そのままで残っていたりします。SDGsの思想には『文化遺産の保護』という目標も含まれていて、こうして自然と地域の歴史を大切にしてきたことも港区が古くから持続可能性を大切にしてきた証だと思います」と最後に語ってくれた西城さん。港区がSDGsという言葉が生まれる前から積極的に持続可能な社会作りを行ってきたことがよくわかりました。

竹芝や青山を観光しながらSDGsの風を感じる

続いて、エコプラザを飛び出して港区各地のSDGsを感じるスポットをいくつか紹介しましょう。

まず初めに紹介したいのは竹芝の「竹芝干潟」です。アトレ竹芝、劇団四季の専用劇場、ラグジュアリーホテルのメズム東京からなる「ウォーターズ竹芝」に隣接したこの干潟は、貝類や甲殻類など、かつて多様な生き物が暮らしていた江戸前の海の再生を目指して作られた場所。「新しいものを作りながら自然が暮らせる環境を取り戻すというのが画期的」とエコプラザの西城さんもイチオシのスポットです。まだ生まれたての干潟には生き物が集まる環境が作られつつあります。なお、毎月第2日曜日は「竹芝干潟オープンデイ」として、時間限定で干潟が開放されています。また、エコプラザでも2022年の4月から青空講座を予定しているそう。

同じ竹芝の「東京ポートシティ竹芝」ではスキップテラスを拠点として「竹芝新八景」を展開しています。竹芝新八景は「雨・水・島・水田・香・菜園・蜂・空」の八つの景から構成されていて、都市における生物多様性の取組みを発信しています。発展目覚ましい竹芝にありながら、ハーブガーデンや水田が見られるということに何より驚き。ベンチや机もたくさん設けられているので、館内のレストランでテイクアウトしたグルメを緑を愛でながら味わうというのもおすすめです。

続いて紹介するのは、東京メトロ・外苑前駅から徒歩すぐの場所にある「ITOCHU SDGs STU-DIO」です。こちらは総合商社の伊藤忠商事がSDGsの発信拠点として運営するスポット。館内ではSDGsに関わる多彩な団体がさまざまな企画展を行っています。また、併設のエシカルコンビニでは、SDGsを身近に感じられる商品を販売。フェアトレード、アップサイクル、ゼロウェイスト、ヴィーガンなどをテーマに、世界中から集めたサステナブルに根ざした最先端アイテムが手に入ります。港区に本社を置く企業が取り組むSDGsを分かりやすく感じられるスポットといえるでしょう。

そのほかにも、港区本庁舎に夏限定で登場する緑のカーテン、亀塚公園や三田台公園にあるビオトープ、芝BeeBee’sプロジェクトが生産している芝地区産はちみつ「しばみつ」、伝統建築を活用した芝浦の「伝統文化交流館」、そして体験しながら都市と自然のつながりが学べる「みなと科学館」など、まだまだ紹介したいスポットや取り組みがありますが、そちらはまた別の機会に。ぜひ東京・港区を訪れて、楽しみながらSDGsの風を感じてみてください!

《こちらの記事で紹介されている主なスポット》

港区立エコプラザ
所在地:東京都港区浜松町1-13-1
開館時間:9:30〜20:00
休館日:毎月第4月曜日
※第4月曜日が祝日の場合はその翌日
https://minato-ecoplaza.net
ITOCHU SDGs STUDIO
所在地:東京都港区北青山2-3-1 Itochu Garden B1F
開館時間:11:00-18:00
休館日:月曜
※月曜が祝日の場合はその翌日
https://www.itochu.co.jp/ja/corporatebranding/sdgs/about.html

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