東京・港区で有名神社・仏閣の別院・分祠めぐり 東京にいながら高野山や豊川稲荷などの御利益にあずかろう!

約40か所の神社と約280か所の寺院があり、増上寺や乃木神社のように全国的な知名度を持つ寺社も多い東京・港区。そのなかには他県にある有名寺院の本山に準じる「別院」や、神社の御祭神を離れた地で祀る「分祠」があることをご存知でしょうか。今回はそんな4か所の別院・分祠を巡ってみたいと思います。

高野山東京別院 お遍路も体験できる弘法大師ゆかりの寺院

まず1件目に訪ねたのは、高輪にある「高野山東京別院」です。都外から訪れる場合は、JR山手線の高輪ゲートウェイ駅が最寄り駅。おととし開業したばかりの新駅を出て、高輪二丁目の横断歩道を渡って桂坂を登っていくと左手に大きな建物が見えてきます。


高野山といえば、弘法大師・空海が今から約1200年前に開いた真言宗の総本山。和歌山県高野町にある山全域が総本山金剛峯寺の境内地として信仰されている日本有数の大寺院です。

東京の別院は慶長元年(1596)に学侶方の在番所(仏教の研究に務めた僧侶たちの学びの場)として開創。その後、延宝元年(1673)に現在の地に移り、金剛峯寺と江戸幕府をつなぐ役割も果たしました。現在の名称になったのは昭和時代に入ってまもなくのこと。一方で、かつて「高輪」の地名が「高縄」という表記だったことにちなみ、「縄=結ぶもの」という謂れから「高輪結び大師」とも呼ばれており、縁結びの御利益を求める参詣者が絶えない神社でもあります。

二本榎通り沿いにある正面入り口には、御本尊である空海上人の像が。そこから昨年改修されたばかりの山門をくぐると、仏像が置かれた石柱がずらりと並ぶ光景が目に留まります。これは弘法大師の生誕地である四国のお遍路にちなんだ「四国八十八ヶ所お砂踏み」というもの。石柱前にある石畳の下には88か所の霊場から授かった砂が埋められており、これを踏みながら礼拝することでお遍路と同じ御利益が得られるといわれています。

右手には百度参りの基準となる「百度石」や平成27年(2015)の高野山開創1200年を記念して再建された「明神社」などが。そのほか、近くにはお釈迦様が悟りを開いたインドのブッダガヤの方向を指す仏足石を配した「方位測定基点」があるなど、“空海上人が開いたテーマパーク”と例えられることもある高野山本院に通じるポイントが点在しています。

遍照殿と呼ばれる本堂の内部には、徳川綱吉公の母・桂昌院の喜捨によって元禄16年(1703)に造られた木造弘法大師像と、その脇侍である愛染明王像、不動明王像が祀られています。

毎日9時から15時までは写経体験(奉納料1000円)を受け付けており、月2回土曜日の午前10時からは「阿字観実修・茶話会」(現在は新型コロナウイルス拡大防止のため無期限休止中)を開催。その他、多彩な行事を行っているので詳しくは公式ホームページにてご確認を。

出雲大社東京分祠 日本一の縁結びの神様から御力をいただこう

続いて、東京メトロ・泉岳寺駅から浅草線に乗って大門駅へ行き、大江戸線に乗り換えて六本木駅へ。六本木通りを右手に入った路地に「出雲大社東京分祠」があります。すぐそばには六本木ヒルズがあるにぎやかな界隈。オフィスビルとマンションがひしめく街の中に神社があることにちょっと驚くかも。

島根県の出雲大社といえば、国造りの神様として有名な大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)を主祭神として祀る日本を代表する神社。『古事記』の中にも創建のいわれが書かれている神話の地のひとつです。

全国各地に分祠があるうち、東京では六本木の東京分祠が唯一の分祠です。明治11年(1878)に神田明神に設けられた東京出張所が前身。その後、明治15年(1882)に麹町に神殿が建立され、明治22年(1889)に現在の場所へ移されました。今の神殿は昭和55年(1980)に建てられたものです。

参道の階段を上がったら、まずは手水社で手を洗い口をすすぎ、その隣にある祓社にお参りをして心身を清めましょう。

次は、立派なしめ縄がかかっている御神殿にお参りを。幾多の試練を乗り越えて妻の須勢理毘売命(すせりひめのみこと)と結ばれた大国主大神。夫婦の住まいだった出雲大社は「日本一の縁結びの神様」として知られています。

その「縁」の中には、恋愛の縁だけではなく、友情や仕事など社会におけるあらゆる縁を含んでいるそうです。しっかり願いを込めて手を合わせれば、きっと良い縁を呼び込んでくれるはず。なお、神社は二礼二拍手一礼で参拝することが多いですが、出雲大社は二礼四拍手一礼が正しい参拝方法です。
出雲大社東京分祠
所在地:東京都港区六本木7-18-5

永平寺別院 長谷寺 日本最大級の木造仏「麻布大観音」は圧巻

次の「永平寺別院 長谷寺」までは、出雲大社東京分祠から六本木通りを歩いて15分ほど。最寄り駅の東京メトロ・表参道駅からだと徒歩約10分ほどで辿り着けるところにあります。

永平寺は鎌倉時代の寛元2年(1244)に道元禅師によって開かれた曹洞宗の大本山。福井県にある本院は修行僧の道場として広く知られています。

江戸時代より前、長谷寺が立つ場所は「渋谷が原」と呼ばれ、奈良の長谷寺の御本尊である十一面観世音菩薩像と同じ木で造られた観世音菩薩像を祀る小さな観音堂があったといいます。その観音堂をもとに、江戸開府後、徳川家康公の命を受けて幼なじみの門庵宗関和尚によって創建されたのが長谷寺です。

そこに永平寺の出張所が置かれたのは、大正時代の半ばのこと。さらに昭和24年(1949)には永平寺の別院となり、信仰の場としてだけではなく東京における修行道場としての役割も持つことに。現在も10名の僧侶のもとで約30名の修行僧が暮らし、学びに励んでいます。

開創時には約2万坪もの寺領を与えられた境内は、現在も法堂、僧堂、観音堂などがある広大な空間です。一角には池に鯉が泳ぐ庭園もあり、周囲の喧騒を感じさせない静かな雰囲気が漂っています。

御本尊の釈迦牟尼仏とともにこの地域を長らく見守ってきたのが、観音堂に安置されている「麻布大観音」です。正徳6年(1716)に建立された後、太平洋戦争の戦火で消失し、昭和52年(1977)に再建された十一面観世音菩薩像。一本の楠から彫られた約10メートルの仏像は木造仏として日本最大級の大きさを誇り、たおやかな笑みを浮かべながら、光背に7体の仏坐像が刻まれた壮観な姿を見せています。堂内で実際に見上げてみると、その迫力に誰もが息を呑むはず。

毎週月曜日の夜には「月曜参禅会」という座禅会を開催(現在は新型コロナウイルス拡大防止のため無期限休止中)。境内では若い修行僧の方を見かけることもあり、修行に勤しむ姿に不思議とこちらも引き締まった気持ちにさせられます。

豊川稲荷東京別院 無数の狐に囲まれるフォトジェニックな空間

4か所目の「豊川稲荷東京別院」へは、永平寺別院 長谷寺の近くにある「南青山七丁目」バス停から港区コミュニティバス「ちぃばす」の赤坂見附駅行きに乗り、「豊川稲荷前」で降りると便利です。鉄道では東京メトロの赤坂見附駅が最寄駅。駅から青山通りの坂を上がって徒歩約8分ほどのところにあります。

「おいなりさん」と聞くと狐を祀る神社を想像するかもしれませんが、愛知県に本山がある豊川稲荷は正式名を「円福山妙嚴寺」という曹洞宗の寺院です。室町時代の嘉吉元年(1441)に東海義易禅師によって開創。鎮守である豐川吒枳尼眞天(とよかわだきにしんてん)が稲穂を背負い、白い狐に跨ったお姿であることから豊川稲荷と呼ばれるようになりました。

東京別院は、江戸の名奉行で知られる大岡越前守忠相公が赤坂一ツ木にあった屋敷に豊川稲荷の分霊を勧請したことが起源です。明治20年(1887)に現在の場所へ移転し、正式に豊川稲荷の別院になりました。緑に囲まれた境内はにぎやかな青山通りに面しながら周囲と一線を画した静謐な空気に包まれています。

豊川稲荷といえば商売繁盛の御利益で有名。現代では芸能関係の方々からの信仰も厚く、そのほかにも財宝運に御利益がある融通稲荷、因縁除けの守護神である叶稲荷、子宝を授けてくれる子宝観音など、境内にさまざまな仏様が祀られています。また、恵比寿天や大黒天ら7体の神様が境内に点在し、ここ1か所で七福神めぐりができるスポットになっています。

1周10分程度で回れるくらいの境内ながら、じっくり回れば回るほど奥が深い空間。いたるところに狐の像が置かれ、願いの叶った人々から奉納されたのぼりが並び立つ奥の院の山道などフォトジェニックなポイントも数多く見つかります。文化会館には、いなり寿司などの軽食を提供したり、お土産物が買える茶屋があるので、都心ではなかなか味わえない門前町歩きの気分を楽しんではいかがでしょう。

一日で回るのにちょうどいいコースですし、もちろん何日かに分けて1か所ずつまわるのもおすすめです。和歌山、島根、福井、愛知を全部回るのは大変ですが、東京・港区にある別院・分祠で各地の御利益にあずかってみてはいかがでしょう。

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