浜松町の未来が輝く!世界貿易センタービルディングの建替えプロジェクトに迫る

かつては大名屋敷が立ち並び、増上寺の門前町としても賑わった浜松町。1947年(昭和22年)には港区に所属して芝浜松町となり、1972年(昭和47年)から現在の町名になりました。そして、1970年(昭和45年)には後に浜松町のシンボルとなる世界貿易センタービルディングが竣工。当時、東洋一の高さを誇った超高層ビルは、浜松町駅に直結した総合ビルとして、半世紀にわたり親しまれてきました。今、その世界貿易センタービルディングが生まれ変わろうとしています。2021年に先行開業した南館に続く形で、現在は本館とターミナルの建替えプロジェクトが進行中。2027 年の一部開業を目指して、工事が進められています。新しい世界貿易センタービルディングは、果たしてどのような姿になるのでしょうか。プロジェクトを主導する株式会社世界貿易センタービルディング・開発企画部次長の荒川和樹さんに、計画の詳細をお聞きしました。

日本で3番目に誕生した 超高層ビルはブロンズ色

――昭和後期に誕生した初代の世界貿易センタービルディングですが、まずはビルが建設された経緯をお教えください。

「着工したのは1967年なのですが、その3年前に開催された東京オリンピックが一つのきっかけになりました。オリンピックを契機に日本をより経済的に発展させていかなければいけないという時代背景の中で、日本を代表する超高層ビルを建て、高度経済成長を東京から牽引していこうという象徴的な意味合いがあったと聞いております」

周囲に高い建物が存在しなかった竣工当時(写真提供:株式会社世界貿易センタービルディング)

――なぜ浜松町が建設場所に選ばれたのでしょうか。

「1964年に羽田空港とモノレール浜松町駅をつなぐ東京モノレールが開業しまして、当時は国鉄ですがJR浜松町駅の駅舎もあり、交通の拠点となる場所だったのと、その横に広大な土地があったというのが主な理由です。貿易並びに交通に関する総合センターというコンセプトで、東京商工会議所をはじめ、財界や所管庁、金融機関などの協力を得て建設されました」

一級建築士でもある荒川和樹さん

――高さ約152mのビルというのは、当時もすごいインパクトだったと思います。

「そうですね。初代のビルは郭茂林(かくもりん)という建築家の方が全体計画を監修され、日本では珍しいブロンズ色の特徴的な外観のビルでした。
霞が関ビルに次ぐ日本で3番目に誕生した超高層ビルで、西新宿に京王プラザホテルが建設されるまでは日本一の高さでした。浜松町駅前のランドマークとして多くの方の記憶に残っているのではないでしょうか。」

旧芝離宮恩賜庭園から見上げた初代の世界貿易センタービルディング

――眺望も良かったのではないでしょうか。

「はい。初代の世界貿易センタービルディングは40階建てのオフィスビルでしたが、最上階には当時はまだ珍しかった展望室がありまして、そこからは東京が一望できました。入場料もそこまで高くなく、収益を上げるというよりも、体験価値を提供するということに重きを置いていたのは、先見の明があったと思っています」

展望室からは東京中を見渡すことができた(写真提供:株式会社世界貿易センタービルディング)

新しいビルの最大の特徴となるステーションコア

――歴史を刻んできた世界貿易センタービルディングですが、現在、建替えが進められています。新しいビルの本館は46階建て、高さ235 mになるそうですね。建替えることになった理由をお教えください。

「ビルの設備が更新時期を迎えるという理由もありましたが、都内の至るところで再開発が行われている中、当ビルも、羽田空港や都内各所へのアクセス性が良い浜松町駅のポテンシャルを更に生かして競争力のあるビルに建て替えるという決断をしました。

本館とターミナルを建替え中

――建替えの“テーマ”のようなものはあるのでしょうか。

「ビルを建替えるからには、社会的な意義は無視できませんし、行政及びステークホルダーの皆様からの協力を得ないといけません。そこで、建替えるにあたって目指したのがアクセス性の向上です」
――アクセス性の向上とはどういうことでしょうか。

「浜松町は羽田空港へのアクセスもいいですし、山手線や京浜東北線、地下鉄の大江戸線や浅草線にバスやタクシーまで、様々な交通機関が乗り入れる“交通結節点”という特徴があります。他にはない大きな魅力である一方で、それぞれの路線の乗り換えが分かりづらいという課題がありました。せっかく交通結節点としてのポテンシャルが高いのだから、より明確に乗り換え動線を最短ルートで繋ごうというのが、建替えプロジェクトの目玉の一つになっています。具体的には、ステーションコアと呼ばれる吹き抜け空間を整備しまして、その空間を経由して各交通機関にシームレスに乗り換えていただくイメージです」

ステーションコアを1階から見たイメージ図(写真提供:株式会社世界貿易センタービルディング)

――浜松町を訪れた人の動線がスムーズになるということですね。

「改札を出たらステーションコアを通って、すぐに次の交通機関に移動することができます。また、浜松町駅西口エリアはA街区・B街区・C地区の3つの街区なり成り立っており、オフィス、ホテル、商業施設、カンファレンス、医療施設、観光プレ体験施設、住宅、芸術センターといった多種多様な機能が整備される予定ですが、各施設にアクセスする際もステーションコアが重要な役割を担っています。

建替えの核となるステーションコアの3階部分の模型

観光プレ体験施設やラグジュアリーホテルも開業

――建替えプロジェクトは、2027 年から順次開業を迎えます。新しくなった世界貿易センタービルディングならではの施設はございますか。

「3階のステーションコアからワンフロア下った2階に、観光プレ体験施設をオープンする予定です。どの観光地にも観光案内所があると思いますが、観光プレ体験施設では、通常の観光案内所のようなインフォメーション機能も備えながら、そこからもう一歩踏み込んで、観光のプレ体験をしていただける施設となっています」
――どういった体験ができるのでしょうか。

「リアル体験とデジタル体験の両軸で考えているのですが、例えばリアル体験であれば、地方の職人の方をお呼びして、展示会やイベントのような形で匠の技を紹介したり、デジタル体験であれば、VRやプロジェクションマッピングなどを活用しながら職人の方の活動風景を伝えたりといったことを考えています。地方には埋もれている素晴らしい技や伝統がまだまだたくさんあります。プレ体験をしていただくことで、本当の体験をしたくなるような施設にしたいですね」

観光プレ体験施設のイメージ図(写真提供:株式会社世界貿易センタービルディング)

――2028年には本館の高層フロアにあたる36階~46階に、ラグジュアリーホテルのラッフルズ東京がオープンします。

今後の浜松町のポテンシャルを考慮すると、MICE施設や、国内外からのお客様を受け入れるラグジュアリーホテルの絶対数が不足することが予測されます。体験価値を提供できるようなホテルがあることで、浜松町はただの経由地ではなく、滞在したくなる街になるはずです。羽田空港からのアクセス性抜群の浜松町に新たな滞在拠点を形成することで、東京の国際競争力を高めていくという大きな流れの一助になればと思っています」

様々な活動によって浜松町の魅力を国内外に発信

――浜松町には様々な観光スポットもありますよね。

「浜松町駅の目の前には旧芝離宮恩賜庭園がありますし、少し歩けば増上寺や芝大神宮、浜離宮恩賜庭園もあります。竹芝に行けば海も見えますし、水上バスや観光客船にも乗れます。浜松町は観光地として非常にポテンシャルの高い街なのですが、その魅力を更に多くの方に知っていただきたいと思います。その土地ならではの魅力的な価値を“ユニークベニュー”と言いますが、ビルを建替えることによって、ユニークベニューをうまく顕在化させ、街全体での魅力発信力を高めていくのが我々の大きなテーマでもあります」

ライトアップイベント時の旧芝離宮恩賜庭園(写真提供:株式会社世界貿易センタービルディング)

――世界貿易センタービルディングでは、会社として浜松町のまちづくりにも力を注いでおられます。どのような活動をされてきたのでしょうか。

「2023年4月に一般社団法人浜松町芝大門エリアマネジメントを立ち上げました。エリアマネジメント活動として屋外広告物を活用した街の賑やかしや、地域の魅力を伝えるための地元小学校への出張授業、他には、周辺の竹芝エリアや芝浦エリアと連携して旧芝離宮恩賜庭園を舞台としたライトアップイベントなども実施しています」

2024年9月に行われた御成門小学校での出張授業(写真提供:株式会社世界貿易センタービルディング)

――様々な活動をされていますね。

「エリアマネジメント組織として町会・企業・商店会とも連携を取り、地域の方々と話し合いながら、どういうものが浜松町に望まれているのかをしっかり汲み取って、進めていかないといけません。新しいビルが完成する前の準備段階なので、外から見て目立つほどの活動にはなっていませんが、エリア全体のポテンシャルを信じて、ビルの完成時にはより大きな盛り上がりとなるように、まちづくりに取り組んでいけたらと思っています」
――最後に、これから浜松町を訪れる国内外の方々に向けて、メッセージをお願いいたします。

「この街で働く者として、浜松町は知れば知るほど魅力の詰まった街だと思いました。数百年前の庭園やお寺が現存し、その価値を今に伝えている場所って他にそうはないですよね。伝統や文化に敬意を表しながら、建替えプロジェクトを通して、浜松町という街の魅力をもっと浸透させていきたいと思っています。プロジェクトが終結しましたら、ぜひ浜松町駅と新しい世界貿易センタービルディングにお越しください」
《株式会社世界貿易センタービルディング》
https://www.wtcbldg.co.jp/

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